よろづやアンテナ

ITから生活の参考になる情報を備忘録代わりに残していきます

50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?[林 總氏]①


先日、「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」 の続編”50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?”ブックオフで発見!


前作が良書だったので、迷わず購入しました。


過去記事はこちら↓
 

ityorozuya.hatenablog.com

 

実は、この書籍を読み終わった後、少し感動してしまいました。その理由は、本書が会計、経営のコツをビジネスストーリーに基づいて書かれていて、結果は想像できていましたが、努力の末に勝ち取った結果に共感してしまいまったからです。


この書籍の著者は林 總氏ですが、話を書くのがうまいです。前作もそうですが、会計や経営の話を、ストーリーを交えながら分かりやすく書かれています。


そして、ストーリーに取り入れる事で、イメージしやすく、実際の仕事に落とし込みしやすいのではと感じます。特に、在庫、資金繰りについて書かれた部分は、実際に輸入ビジネスを実践している時に経験した、”現金(実際はクレジットカードの利用可能残高)がなくて仕入れができない”という危機に陥った事を思い出しました。


では、本書はどういった内容かと言うと、、、


赤字続きのファミレス「ロミーズ」の不採算店に、強力ライバルである全国チェーン「カッパーズ」がお店の近くに新規出店する・・・という所から始まります。
※店名等はすべて架空の名前です。


その店舗(千の端店)は、24か月連続赤字を続けている、いわばロミーズのお荷物。しかし、千の端店は、ロミーズの第一号店。なんとしても、黒字にしたい。


そんな中、経営コンサルタントをする傍ら、東京経営大学の特任教授として、管理会計を教えている安曇が再び登場します。


彼のゼミを受けている女子大生「菅平ヒカリ」は、彼の元で1年間、分厚い管理会計のテキストを読んでいるだけだった。ヒカリは、安曇ゼミの目玉である、「クラークシップ」に参加する為に、おもしろくないゼミに一度も休まずに参加し続けます。


そのクラークシップとは、1年間を通じて行われる企業実習プログラム。そのプログラムで、実際に企業で働いてみて会計、経営を学ぶというものです。


そこで、安曇は、ヒカリにロミーズの赤字店舗であるロミーズの千の端店で働くように指示されてしまいます。


ヒカリは、大手企業のコンサルタント企業などを想像していたので、最初は戸惑います。そこで、安曇は問いかけます。


安曇:「クラークシップの目的はなんだと思うかね?」
ヒカリ:「就職に有利になることだと思います。」
安曇:「違うね。君がこの1年間で勉強した知識が、なんの役にも立たないことを肌で感じる事にある」


これまで、頑張って勉強した分厚いテキストの知識を無駄であると、言われてしまいます。分厚いテキストには、確かに知識が詰まっている。しかし、その知識を頭に詰め込んだだけでは、現場では何の役にも立たない。大切なのは「現場での経験」だと教わります。


そして、半ば乗り気でないなか、ヒカリは千の端店で働く事になります。


そして、働く先であるロミーズには、かつて安曇ゼミにいた猪木順平が取締役経営企画室長をしていると聞きます。以前はコンサルタント会社に勤めていて、昔から勉強が大好きだっとも。


ここから、ヒカリの現場での、会計、経営を実際に経験していく話になるのですが、この冒頭だけでも共感できる部分がいくつかありました。


大切なのは現場での経験

私は上司と話をしていて違和感を感じる事があります。それは、現場を見ていない、もしくは知らない事から始まっていると思います。


この上が現場を知らないという図式は、どの企業でも起こりうる話です。私は派遣会社に働いていますが、上司は現場の状況をほとんど知りません。


よくある事ですが、常駐先で業務をしていて、1年以上、営業が顔を出さない、上司が現状確認に来ないという事はよくあります。営業は、顧客から話さえ聞けば十分と思っていますし、上は、営業から話を聞けば十分と考えています。


顧客が営業に話す事は、オブラートに包まれている事があります。その為、実情を知らない上司が誤った判断をしてしまうという事が起こりうる訳です。


以前も、あるトラブル続きのプロジェクトがあり、そこにチームで働いているメンバーは徐々に精神をやられていきます。リーダー自体が、それほど耐久力がなかった為、部下に対してフォローするどころか、自分の業務だけで精いっぱいで、冷たい態度をとったり、無茶な業務を指示する事がありました。


そのリーダーの上司は、まともにヒアリングをせず、問題を隠して報告するリーダーの言葉を真に受けてしまいます。その後、ストレスで精神状態に異常をきたしたメンバーは、会社に出社できなくなり、病院の診察の結果、休職を余儀なくされてしまいます。


実際は、とても働けるような状況でなかったにも関わらず、詳しく調査もせず、放置した結果、何人か精神的な病気であると診断される結果になりました。


私は、そのリーダーを信頼している上にも問題があると思いますし、もっと深堀してヒアリングしなかった上にも問題があると思います。事件は常に現場で起こっています。現場を知らない人間が、現場をコントロールしようとすること自体が間違っているのです。


本を読んだだけで経験を積んだと勘違いしてはならない 

この書籍にも言えますが、どんな本を読んだところで、実際に行動に移さなければ知識の価値はありません。


書籍を読んで満足する人が圧倒的に多いのではと思います。そういう人が自己啓発本を100冊読もうが、1000冊読もうが、大した成果は望めないと思います。


大切なのは、”書籍を読んで得た知識を実際に活用する事”です。


私の仕事はシステムエンジニアですが、私は設計業務をしたいがために、上が出してきた条件である、CCNP(ネットワーク機器メーカーCisco Systems社による技術者認定資格の一つ)を一年間かけて取得しました。


しかし、CCNPをとっただけで、実務経験がない私は、現場で地獄を見る事になります。なぜなら、実際に機器を触った事がないので、誰でもできそうな作業ですら、手が止まってしまったのです。


その時に一緒に仕事をした別の会社の方は、資格を持っていませんでしたが、実業務を何年も経験している為、手際のいい作業を目の前で見せてくれました。


資格武装しているが作業ができない私と、資格を持っていないが難なく作業をするメンバー。


どちらが結果を出すかは、明確でした。私は、その頃からIT業界の資格について疑問を持つようになったのです。


資格は無駄だとはいいません。しかし、資格がなくてもレベルの高い技術をもっている人はたくさんいるのです。知識だけ詰め込んで、現場を知らないというのは、とても危険です。


株式会社セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長、最高経営責任者(CEO)である鈴木さんも、現場の重要性を説いていると思います。


この現場を経験する事は、どんな仕事であっても大切な事なんだと思います。その為、「現場を見てください!」と部下に指摘されているような上司は、上司失格です。


逆に、現場をしっかりと調査する事で、その事業は大きく改善される可能性があるという事も理解しておく必要があります。まずは、”考えるのではなく、現場に行くこと”ではないでしょうか。

ityorozuya.hatenablog.com

 

 

50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?