よろづやアンテナ

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「一勝九敗(柳井 正著)」 失敗から何を学ぶかが成功する為に重要な考え方

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前回に引き続き、ユニクロの創設者である柳井さんの著書「一勝九敗」から学んだ事を共有したいと思います。



この書籍を読んで、一番印象に残るのは、”失敗”対する姿勢、考え方です。 


今まで属した会社では、他から借りてきた言葉のように、”失敗を恐れるな!”と叱咤激励する役員、社長を散見してきました。


この言葉は、実はとても奥は深く、この言葉を聞いて仕事に落とし込める人はあまりいないのではないでしょうか。


同様に”継続は力なり”という言葉も、ビジネスをしているとよく聞きますが、これも継続する事が答えではありません。ただ、継続するだけで成功すれば、誰も苦労しません。大切なのは、継続もそうですが、日々、ゴールに向かって試行錯誤していく事です。


世の中にある言葉を安易にとらえる事は、とても危険であるとも感じます。


失敗したと判断したらすぐに撤退できるかどうか

書籍の中では、ユニクロを経営していく中で経験した様々な失敗が書かれています。この失敗の数々から、書籍のタイトルである「一勝九敗」も理解できると思います。


ビジネスは失敗する事の方が多い。しかし、一度の成功が、それまでの失敗を覆すほどの利益をもたらすから、ビジネスは失敗を繰り返しても、成り立つのだと思います。


サラリーマンの場合、失敗しない事を前提に考えて仕事をしますから、リスクばかりに気にしてチャレンジできなくなるのは、当然かもしれません。


多くの場合、経営者は何歩先も見る、そして、サラリーマンは一般的に目の前を見るという事が一般的だと思います。


そして、サラリーマンの場合、上から指示がなければ、リスクを負いたくないというのが現状ではないでしょうか。


その為、そもそも、新しい戦略を立てた時に、それがどういう状態なのか、あまり分析できていない事が多い気がします。人のよっては、自分の組織の赤字は自分には関係ないと思っている人も多いと思います。


つまり、今の事業が正しい方向に向かっているのか、それとも悪い方向に向かっているのか判断できない事が多いのです。しかも、これは経営に近い人でも判断できていない事が多いです。


その為、これまで投資してきた金額を考えて、この事業は直ぐにでも止めるべきという判断ができないのです。特に、サラリーマンの場合、上から総合的に物事を見れる人が少ない事、そして、自ら従事している仕事に失敗を見出したくない、もしくは、見いだせない為、”この事業は止めるべき”と言えないのです。


そして、そのジャッジは自分ではなく、上がするべきと思っていますので、その傷口はさらに広がる事があるのです。重要なのは、上は現場に信頼できる人間を置き、常に情報を共有する事です。それにより、現場でどういった問題が起きているのか、より正確に、迅速に得る事ができるので、撤退を早い段階で決断する事ができます。


書籍の中でも、”失敗には次につながる成功の芽が潜んでいる”とあります。柳井さんは、事業は失敗するものだし、やってみないと分からない事が多い。だから、実行しなければならない、と書かれています。
 

ただし、失敗を成功するための糧とするかどうかで、失敗の価値が変わりますし、何より、失敗だと分かったら”すぐに撤退”できるかどうかが重要だと書かれています。 


以前、テレビがアナログからデジタル化へ移行していく中で、いつまでもテレビ事業を継続させた大手企業は、まさに、”すぐに撤退”が出来ず、赤字が膨れ上がり、やっと撤退を決める事ができたのです。そう、損切できない投資家と同じ心理かもしれませんね。


人材は経営資源の中で最も重要

書籍の中でとても印象的だったのが、”人材は経営資源のなかでももっとも重要だ。”という言葉があります。


ユニクロを作り上げていく中で、柳井さんがいかに人材に支えられてきたかが、柳井さん自身の言葉で書かれています。ユニクロが今のユニクロになったのも、いい人材が集まったからだと思います。


先日も、たまたまテレビをつけていたら、少子化の影響で人材が不足しているというテーマで様々な企業が取り上げられていました。その中で、ちょうどユニクロが人材確保の重要性を話していたので、書籍の内容とリンクしたのを憶えています。


そして、ユニクロで結果を出している人材は、異業種の人が多いそうです。それは、業界にとらわれず、「なぜだろう」「どうしてだろう」と原理原則から取り組む事ができるからだとあります。


そもそも、同業種だから疑問に思わないのは、その色に染まってしまっただけだと思います。


以前、鈴木さんの「本当のようなウソを見抜く」の書籍について書きましたが、同様に、会社に長くいると顧客視点で考える事が難しくなるとあります。


人は、習慣に強く影響を受けます。だから、これまでやってきた仕事の習慣に強く影響されてしまうのだと思います。


だからこそ、異業種から来た人は、それまでの概念にとらわれない新しい、柔軟な発想で仕事に取り組めるのだと思います。そして、異業種から来て結果が出せると言う事は、やはり、スキルだけに頼らない人間力だと私は思います。


そして、書籍の中に、”改革には現状否定が欠かせない。”とあります。


この言葉、常に自分の中にも留めておきたい言葉ですが、人は平和を求めて馴れ合いになる事が圧倒的に多いです。この馴れ合いが組織をダメにするのですが、日本の企業は、これを良しとする事が一般的な慣習になっている気がします。


人は、それぞれ個性があり、観点が違います。だから、意見を出し合えば、新しい発想が生まれるはずなのですが、なぜか、トップダウンでしか物事を考えられないようになります。


下は自分で考えずに、上に判断を仰ぎ、上は自分達が絶対だと思い込む。こんな組織は、人間の可能性を最も失わせた最悪な環境だと私は思います。


人は考えるから成長する。だから、日々、考える癖をつけなければなりません。人は考えなくなったら”おしまい”です。


書籍の中で、こうあります。”わが社には自分で本当に考え、判断できる人、さらに言えば、「働かされる人」ではなく、「経営ができる人」が必要なのだ。”とあります。


組織が大きくなればなるほど、この考え方はとても重要になると思います。


なぜなら、組織が大きいと集中管理に限界が来るからです。以前、日本有数の大手企業の一組織で働いた事があります。そこでは、数百人という人が働いていましたが、その細部では、とても大手企業とは思えないような仕事の振り方をしていました。


そのブラックぶりから、わずか数週間で人がいなくなる事もありました。その事を、その組織のマネージャーに相談したところ、「組織が大きくなり過ぎると、細部まで把握できなくなっていた。」と言っていました。


数十人くらいまでは、なんとか各メンバーの顔や名前を憶えている事ができたが、100人を超えたあたりから、それも難しくなっていき、結果、マネージャー配下のリーダーからの報告だけを頼りに業務をしていたが、実は、リーダーは人間的な問題を隠し、報告しなくてもいいと判断したものは、隠ぺいしていたのです。


つまり、精神的に追い詰めるような仕事をしていたにも関わらず、上はその事を全く知らなかったのです。


組織は巨大化していくと、末端が何をしているか分からなくなります。その為、その間で中継する役割の人は、とても重要な役割を持っているのです。


しかし、残念な組織は、護身の為にしか仕事をしないリーダーが氾濫しています。それにより、末端から腐っていき、気付いたたら、経営のリスクになっているという事があるのです。


だからこそ、ただ仕事をしているのではなく、全体を考えて仕事ができる人材がとても重要になるのです。そして、そういった人材は、必ず、部下に対してもレベルの高い視点で指示を出しますから、プラスの作用が働くようになるのです。


主体性を持って考え、行動する事。これがいちサラリーマンでも成功する秘訣となるのです。

 

一勝九敗 (新潮文庫)